「あの人しか分からない」を終わらせたい、と言った日
kintone hiveの舞台で、僕は「あの人しか分からない」を終わらせたい、と言いました。(登壇の様子はこちら)
属人化の解消。 最近の茅野のテーマは、ずっとこれでした。
登壇してからも、その先を諦めるつもりはありませんでした。
次に狙ったのは、もっと 本丸に踏み込む挑戦 です。
4本柱、全部乗せで挑んだ
社内では、4本の柱を同時に進めていました。
- CRM・業務負担管理の再開発
- SFA新規開発
- AI草案作成の精度向上
- 日報判定基準の自動化
(この内容は8月のkintone cafeでLT資料としてもお話ししました)
どれも中途半端にはしたくなかった。本丸への挑戦、のつもりでした。
盛大に頓挫した
結論から言うと、ほぼ自分だけが使う状態になりました。
特に日報は、システムよりもっと手前の壁にぶつかりました。
「文章で書く」という文化が、そもそも社内になかったんです。
LTでまとめた結論を、正直にそのまま載せます。
「結局の所、ふりだしに戻ってしまった」
「文章日報を書くという社内の文化形成からテコ入れが必要」
「考えてみればふりだしより後退している気もする」
かなり、心が折れました。
ただ、収穫がゼロだったわけではありません。
hiveに登壇したことで色々な人と出会えたし、AI活用についての経験値は驚異的に蓄積できた。
これは今でも、そう思っています。
ある心構えに立ち返る
心が折れかけたとき、自衛隊時代に叩き込まれた「通信科隊員の心構え」を思い出しました。
通信科の隊員は、その重大な使命を自覚し、最新の通信電子技術に関する識能を備え、 旺盛な責任感と必通の信念 を堅持し、創意を尽くしてその職務を遂行しなければならない。 また、常に相互の意思を疎通し、通信規律を厳正にし、機材の尊重愛護に努めることが必要である。
── 自衛隊 通信科隊員の心構え より
「必通の信念」。通信を絶対に止めるな、繋ぎ続けろ、という意味です。
システムも同じだと思いました。
頓挫したからといって、繋ぐのをやめるわけにはいかない。
頓挫の根本原因
冷静になって振り返ると、頓挫の理由は見えていました。
AIを「代行者」として配置していたんです。
社員の作業をAIに肩代わりさせようとしていました。
不慣れな社員からすれば、使い慣れないツールを渡されて「これでやっておいて」と言われるようなものです。
疲弊して、そのまま離脱していきました。
代行させようとするほど、現場との距離は開いていく。
それが、頓挫の正体でした。
転換点:同僚、という捉え方
kintone hackの開催に向けて、開発を進めていた時期がありました。
ただ、公式発表がないまま開催の動きが見えなくなり、一旦保留にしました。
でも、その足踏みの時間に、あることに気づきました。
AIをサポート役や代行者として置くんじゃなくて、隣で一緒に働く同僚として捉え直せばいいんじゃないか。
代行者は「任せて終わり」になりがちです。でも同僚なら、隣で一緒に手を動かしながら、考え方や判断基準を都度すり合わせていける。
今、実際にやっていること
今は、Claude・Cursor・ChatGPTを役割分担しながら並走させています。
- Claude:基本的な壁打ちや相談相手。今のメインAI
- Cursor:開発場面の実行役。Claudeで考えて固めた指示プロンプトを渡して、実装してもらう
- ChatGPT:もっと気軽に聞ける相手。以前はメインで使っていましたが、今はClaudeがメインになったので、Claudeが作業している最中の細かい質問に使うことが増えました
- 人間 : 総合的なチェック担当
開発だけでなく、文書作成や稟議まで、この並走のスタイルで進めています。
代行させるんじゃなくて、隣にいてもらう。
それだけで、AIとの付き合い方はだいぶ変わりました。
根拠になった、ある実例
実際にやってみて、手応えがあった出来事があります。
Notion×ChatGPTを使って、知識の「外部記憶装置」を作りました。
日々の業務・学習・悩み・アイデアをAIと壁打ちして、まとめをNotionに格納していく仕組みです。 会社の”ハイテク本棚” 、というイメージです。
(ちなみにNotionをDBとして使っていますが、kintoneでも同じ事は可能です←検証済)
試しに、自分が抱えている案件の思考過程を全部そこに取り込ませて、別の同僚に再構築させてみました。
結果は、 想像以上 でした。
ある同僚が、前任者から引き継いだ案件をChatGPTにまとめさせたところ、「案件PM・顧客折衝・業務コンサル・ライセンス/原価設計・kintone技術調査・移行設計・資料作成を、一人で兼務していた」という整理が出てきました。「ひえ〜」と声が出たそうです。
これだけの内容をExcelなどの資料から自力で読み解いたら、それだけで大仕事です。
でもNotion×ChatGPTなら、全体の流れから現状把握、次にやるべきことまで一気に整理してくれる。
別のメンバーは、自分が伴走している案件の思考過程をChatGPTに噛み砕いてもらい、専門知識がなくても理解できる状態まで持っていけました。
「まるで前任者の代わりに答えてくれるような存在」
そう言われて、腑に落ちました。これがやりたかったことです。
「とりあえず行って対応できたらやってきて」と、前情報がないまま現場に放り出された経験は、僕自身も何度もあります。お客さんは「引き継がれているだろう」と思っている。でもこっちはザックリしか分かっていない。そのギャップに、何度も頭を抱えました。
この仕組みが浸透すれば、そのギャップも埋まっていく。
お客さんにとっても、こちらにとっても、win-winになるはずです。
個人の思考過程をまとめる場としても役立ちますが、本当にやりたかったのは、他人が蓄積した知見すらも、誰でも引き出せる状態を作ることでした。
会社の”本棚”は、みんなで作るものです。何でもいいから、自分がやったことや考えたことをAIと壁打ちして、まとめを格納していく。それだけで、属人化のリスクは着実に減っていきます。
属人化しているけど、知識は属人化していない
さっきの実例が、その根拠です。
実行そのものは、今も自分がやっています。だから、仕事はまだ属人化したままです。
でも、AIと一緒に手を動かす過程で、判断基準やノウハウが自然と言葉になっていきます。頭の中にしかなかったものが、会話のログという形で外に出ていく。
これが、タイトルに込めた意味です。
仕事は属人化しているけど、知識は属人化していない。
属人化の解消は、「人の作業をAIに置き換える」ことじゃなかった。
人がAIと並走しながら、知識を外に出すこと。
そういう形もあるのかな、と思いつつ、今日もAIと一緒に仕事をこなします🖊️
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