「前例がないので、できません」——仕事をしていると、よく聞く言葉です。行政でも民間でも、立場を問わず使われます。
不思議なことに、私はこの言葉を真正面から言われて、そこで諦めて仕事が止まった経験は、あまりありません。たぶん理由は単純で、「前例がない」と言われる前にやってきたからです。
この記事では、これまでの経験と、いま取り組んでいるアバター広報の実践を踏まえ、「前例がない」という言葉の裏側と、前例のないことにどう向き合うかを書きます。
とはいえ、こちらの提案が組織に受け入れられず、動きが止まったことはありました。
新しすぎる、という理由で止められた話
以前いた組織で、現場のためになると確信したやり方がありました。
形を変えながら、何度も提案しました。
しかし返ってきたのは、
「そんなのはいいから」
という一言でした。
別の案件でも、状況に合わせてやり方を組み替える案を出しましたが、
「必要ない」と切り捨てられました。
当時の組織にとっては、
それらは新しすぎたのだと思います。
いまなら当たり前に取り入れられるようなことでも、
「これまで通り」から一歩も出ようとしない空気がありました。
そこにあったのは、
能力や意欲の問題ではなく、
考えることをやめてしまった組織の姿でした。
「前例がない」の正体
経験上、「前例がない」という言葉の中身は、
だいたい次のどれかである可能性が高いです。
- 責任を取りたくない
- 判断したくない
- 失敗したときにラベルを貼られたくない
- 上に説明できる自信がない
- これ以上仕事を増やしたくない
要するに、
変えることで生じる負荷を避けたいという話です。
ただ、その姿勢には大きな落とし穴があります。
変えないリスクは、消えていない
米国の宇宙飛行士ジョン・ヤングの言葉に、
こんなものがあります。
「変えるにはリスクが伴う。
変えなければ、さらに大きなリスクが伴う」
変えることを避けても、
リスクがなくなるわけではありません。
ただ、
未来に先送りされるだけです。
そのツケを払うのは、
数年後の担当者か、次の世代です。
前例がないなら、自由に決められる
私は、前例がないことを
ネガティブに捉えたことがほとんどありません。
むしろ、
- 誰にも邪魔されない
- 誰のやり方にも縛られない
- 自分で全部決められる
これほど自由な状態はありません。
話が進まないなら、自分でやる。
人に任せて遅くなるくらいなら、自分で決める。
前例がないというのは、
裁量が最大化された状態でもあります。
アバター広報を始めた理由
アバターを使った広報活動を始めたのも、
同じ考え方からでした。
地方だけで営業していては、いずれ限界が来る。
では、どうやって
地方の小さな会社を見つけてもらうのか。
「印象に残る方法は何か」を考えた結果、
アバターを使うという選択に行き着きました。
前例がないことへの不安は、ほとんどありませんでした。
むしろ、自分のやり方で進められることの方が魅力的でした。
実際にアバター姿でWeb会議を行うと、
反応は非常に分かりやすい。
面白がられ、記憶に残り、話の糸口が生まれる。
目的に対して、合理的な手段だったと思っています。
前例は、待つものではなく作るもの
思い返せば、
前の組織の広報でWeb漫画を企画したときも、
スマートフォン専用サイトを作ったときも、
すべて前例のない取り組みでした。
結果として、
- アクセス数が跳ね
- 応募数が伸び
- 組織の評価も変わった
前例は、
最初にやった人が作るものです。
ファーストペンギンは、怖くない
前例がないからやらない。
それは一つの判断です。
しかし、
前例がないからこそ、
最初の例になる。
その選択肢も、常にあります。
今の時代の変化は、
「激流」という言葉では足りないほど速い。
舵を切るのをためらっている間に、
景色は一変します。
前例がない?
なら、最初の例になればいい。
それくらいの気持ちで、ちょうどいいのだと思っています。
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